卵焼きを焼く男の、「逃げの美学」
「人事課に、毎日『卵焼きを焼いてくる』男がいるので取材に来て下さい。」
編集部に匿名のタレコミが入った。
卵焼きを焼いてくる?どういうこと?

こういうこと?
とにかく本社へ行ってみよう。
INDEX
毎日、卵焼きを焼く男

本社ロビーにて
―本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。小掠 健人事部人事課 / 係長
勤続そろそろ四半世紀。毎日卵焼きを焼いているらしい。
―早速なんですが、ずばり聞きます。『毎日卵焼きを焼いている』んですか?
そうなんですよ。本社に転属になりまして、お弁当を毎日持ってこようと。じゃあ家族にお弁当作りの負担もかけすぎないように、卵焼きくらい自分で作れるようになろうかな、ということで毎日卵焼きを焼きはじめました。こんな感じです。
卵焼きを焼いています
―え、美味そう。って本当に卵焼きを焼いているだけじゃないですか。
そうですけど????はだかの王様
なんだよ。
―本当にただ毎日卵焼きを焼いているだけだったんですね。なんかの隠語かと思いましたよ。なんでそんなタレコミしてきたんだよ人騒がせな。

これが通報者。良い顔してらあ。
現場(店舗)にいたときは、食事が必ず出てくるので楽チンでしたが、本社勤務だとお昼は自分で用意しないといけないので。じゃあお弁当にしようかなって。―店舗は食事がでるんですか?
そうです、これは私が入社した当初からなので、26年以上前からですね。昔はお店に食堂があって、まかないさん(炊事係)の方がいて、食事を作ってくれていましたね。今はお弁当が出てきます。―めちゃくちゃありがたい制度ですね。
店舗勤務スタッフへの食事支給
店舗勤務のスタッフには、勤務日の食事が必ず支給される。神制度。
ところで、なぜ本社に?
―ところで小掠係長は、ずっと人事畑の方ではないんですよね?
違います。ずっと現場にいました。―なぜ本社に?

それを言う日が来たか。
正直に言うと限界がきちゃいまして。上長に相談して、本社勤務にして頂きました。―体力の限界、気力もなくなり?
頑張った結果、限界が見えたという感覚ですかね。施策が成果に結びつかない。それが続くと、だんだん気持ちがついてこなくなって。―それで、上司に相談を。
はい。そうしたら、「人と関わる仕事が向いているんじゃないか」と言っていただけて。―適材適所の配置換えですね。限界が来たんで退職します!となるより全然良かったですね。
そうですね、でも実は二回くらい辞めようと思ったことがあります(笑)―えっ。
一度目の辞めます宣言
副店長に昇進した時、当時の慣習ということで、オーダーメイドの高級なスーツを贈っていただいたんです。ドルガバの。―出世祝い!しかもドルガバ!

でも…。
それがプレッシャーになっちゃって…。副店長でこんなスーツをポンともらって、自己評価と会社からの評価がつり合ってないな…って思って「辞めさせてください」と申し出ました。―いやスーツあげ甲斐ないなwww それでどうなったんですか?
当時の上司だったか、「(副店長に)なったばっかなのに、何を考えてるの?」と言われて、諭されて。―まあそりゃそうだww
はい。一度目は、それで残りました。―出世祝いあげたら辞めますって言われて会長もビックリしたでしょうね。
二度目の辞めます宣言。本気
二度目は30代半ばです。当時の店長が、仕事は抜群にできる方だったんですが、ちょっと当たりが厳しい方で、耐えきれなくなって。―お察しします。

ツラくてこんな顔になっちゃう
今度は本気でした。家族には反対されたんですが、押し切って転職フェアに行ったんです。―絶対に辞めてやるぞと言う覚悟を感じる。
そこで、キャリアコンサルタントの方と面談をしました。ひと通り話を聞いてもらった後に、言われたんです。「逃げたいだけで、やりたいこともないでしょう?」と。―へえ、厳しい。
でも、その通りだったんです。その一言で、考え方が180度変わりました。もう一度頑張ろうと。―転職フェアに行った結果、転職しないことが決まった。
そうなりますねw―ちなみに、その厳しい店長とは、その後どうなったんですか?
自分から接し方や受け止め方を変えてみたんです。そうしたら関係値がガラッと好転して。何でも教えてくれるし、優しくなった。今では、あの方から仕事の姿勢を教わったと思っています。師匠みたいな存在ですね。
私は試されていたんだと思います。
―めっちゃ良い話。
逃げの美学
―しかしこうして伺うと、言葉は悪いですが「逃げの美学」がある様に感じます。限界まで頑張って潰れて退職するぐらいならその場から一回逃げようぜ、で、三回も好転してきたワケですから。
まあ、そうなのかな?自分ではわからないけど。―野生動物は、逃げイコール勝ちですから。

そうかもw
辞めずに済んだ、と言う意味では都度回避行動をとって良かったかなと思います。―その時もし真正面から立ち向かっていたら、ボロボロになって、本当に病んで辞めて……という最悪のルートもあり得たわけじゃないですか。
本当に、そうなっていたかもしれないですね。はだかの王様
辞めるって言って良かった(?)
愛は小出しに。
―逃げの美学で26年。とはいえ、残り続けてこられた理由は、他にもあるんじゃないですか?
「辞められない理由」ならあります。私の結婚式に、会長が出席してくださったんですよ。―それはありがたい。
職位も全然高くない時期でしたけど、出席してくださって。しかも、招待状の返信が誰よりも早かったんです。一番に返ってきたのが、会長でした。―恐縮過ぎる。

すごく嬉しかったです
優しすぎる会社だなって思いました。ああいうことをしていただくと、簡単には辞められないです。―スーツにビビって辞めようとしたくせにwww
すみませんw まあ結果踏みとどまったのは、会長への感謝とかが有ったからだと思います。―辞めなくてホントによかったですね。
その会長から教わった言葉で、今でも忘れない言葉があって。―ほうほう。
「愛は小出しにしろ。」っておっしゃっていて。
愛は、小出しに
はだかの王様
愛は小出しにしろ。
―深そう。
大きなサプライズを一発ドカンとやるより、日々の小さな貢献や感謝を積み重ねなさい、という意味ですね。家庭でも仕事でも、感謝の気持ちをマメに伝えたり。ちゃんと実行できているかは、まだまだわからないですけど。―なるほど、だから毎日、卵焼きを焼いているんですね!

実践出来てたww
…確かに!おわりに
毎朝の卵焼きはご家族への「小出しの愛」の結晶だった。
人生の節目に立ち会ってくれた会社の上役のみなさまへの感謝を、今も日々還元し続けて行きたいというお気持ちを感じました。
そして、頑張って潰れるくらいなら、逃げてもいい。ちゃんと考えて逃げた先に、適所を用意してくれるのがキング観光。安心して精一杯お仕事が出来そうです。

ご応募待っています。
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Everybody, enjoy キング観光!
